日米格差 | 因果倶時

日米格差

最近欧米系、というよりもアメリカのウェブサイトを見ていて急激に感じているのが、
ウェブサイトの構築、特にUIの設計という点において、
この1年ぐらいでアメリカのサイト設計が格段に進歩したのではないか、ということ。


しばらくあんまりそうは感じていなかったので、
少し衝撃を感じている。
ああ、ゆで蛙状態だったのかな!と。


現在アジアにおいても、
FacebookやTwitterが地域ウェブを席捲しており、
文化の格差というものを飲み込む勢いで広がっている。


インターネットサービスというのはカルチャーに大きく依存するものなので、
地域性に応じたカスタマイズが必要だという考え方を、
もはや必要ないのではないかと思わせるような勢い。


自分が特に感じているのは、
もちろんウェブサイトにもピンからキリまであるとはいえ、
最低スタンダードなラインでのパワーアップが著しいということ。


たとえていうなら、
香港にいくと、まず、「不味いレストンラン」というものにめったなことではお目にかからない。
基本的に全てうまい。


それに近い。


その、一定基準をクリアしたウェブサイトが、ものすごい勢いで量産されているように感じる。
正直、日本のウェブサイトはどれも、一世代前の旧式サイトに見える。


多少先進的なサイトがあるくらいであればちょっと学ぼうぐらいで何も驚かないけれど、
今自分が感じている格差は、
デザイナーやエンジニアの平均的な技術力にあわせ、
組織改革や意識改革を伴う何か重要な変化を起こさなければ追いつけないもののように感じる。


具体的には、
今日本でのネットサービス、サイトつくりは、プロデューサーやディレクターと呼ばれる人たちが主導している。
程度の差はあれ、エンジニアやデザイナーは社内の中での受託業者と化している例が殆どだと思う。


そのせいだと思うが、
エンジニアやデザイナーが、自社のサイトやサービスについて生き生きと語り、発想力を全開にして取り組んだような事業は殆どないように思う。
一方、アメリカから発信されるさまざまな情報には、エンジニアやデザイナーが自らの発想・自らの事業として取り組んでいるサービスに関する情報があふれているように思う。


今、この温度差が著しい技術格差、デザイン力格差として現れており、この差を埋めるには、
組織を、もっと振り切ってクリエイター組織にしていく必要があるのではないかと思う。

というのも、昨今のネット業界における技術革新は、もはや普通のプロデューサータイプの人間には理解が難しい状況になっており、後から追いつくことさえままならない。 その部分についてはまさにテクノロジー業界になっているからだ。

それに加えて、プロデューサーが何かを作ろうとすると、そこには必ず事業的なバイアスがかかり、上司の了解も得る必要があるし、外部の人からの批判も気にしなければいけない。制約が多すぎる。そうやってだんだん、「常識」的なものしか生産されなくなってくる。



今後、組織の中でプロデューサーの一番大きな役割は、仕様を考えることではなく、事業の目的を設定することではないかと思う。 特に重要なのは、その事業のビジョン・意義、を明確な形でチームに示すことだ。 また、ネット業界以外のところで何がおきているのかを常にキャッチアップし、オンライン化できそうなビジネスの種を見つけることも必要だ。なぜならその辺はネット業界のデザイナーやエンジニアは疎くなりがちだから。


そして、デザイナーやエンジニアは、ディレクターに依存するのではなく、自らをセルフディレクションし、最新のトレンドを踏まえて目的に沿ったサービスを考え、サイトをゼロから自由に設計していく。 つまり、これまでと違って、仕様を考えることそのものがデザイナーやエンジニアの役割になるべきだと思う。
そしてディレクターは、それらデザイナーやエンジニアのアシスタントとしてもっぱらライターとして完成物に肉付けをしていく。

ただし、これからのインターネットにおいては殆どのサービスはプラットフォーム型のツールサービスになるので、開発段階においてはライターの出番はどんどん狭まっていくし、むしろ、UIにおける超重要要素としてデザイナー自らがその役割もこなすことで一貫したサイト設計を実現したほうが効率が良い。
つまり特にデザイナーが守備すべき範囲は開発分野も含めてより広範囲になるべきだし、そういうデザイナーの価値がどんどん上がっていく。 そういうデザイナーを育て、存分にアイデアを発散させられる環境を作っていかないと、本当に斬新かつ便利で、世界に衝撃を与えるようなサービスは生まれてこない。 エンジニアだけでは無理。


そんな感じじゃないだろうか?


というわけで、
ようやく自分もそんなことに気づいたので、
自分も、自分自身そしてチームにおけるこれまでの仕事のスタイルを変えていかなければ、
と思っている今日この頃です。